刑吏

刑吏とは
刑吏の仕事

刑吏とは

刑吏とは一般に刑を執行する者のことで,死刑執行人のことも指す.いわゆる【首切り役人】も刑吏である. ここでは中世ヨーロッパでの刑吏の存在・仕事・生活などを書いていく.時代・地域など,行ったり来たりするのはご容赦.

さて,中世世界において人々は【名誉ある】(エーレ)人々と【名誉をもたない】(エールロース)人々に大別された. 【名誉ある】人々とは貴族・聖職者・市民・農民というふうに身分で分かれていた,歴史の表舞台に多く登場する人々である. 一方で【名誉をもたない】人々とは,いわゆる賤民である. 彼らは,死刑執行人,捕吏1,獄丁,看守,廷丁2, 墓掘り人,皮剥ぎ,羊飼いと牧人,粉挽き,亜麻布織工,陶工,煉瓦製造人,塔守,夜警,遍歴職人と奇術師,山師と抜歯技術師,娼婦, 浴場主と理髪師,薬草売り,乞食取締夫,犬皮鞣工,煙突掃除人,街路掃除人などであり,性格は異なるが,ユダヤ人,トルコ人, 異教徒,ジプシー,ヴェンド人などのキリスト教社会秩序の外に立つ人々*1もそうであった.
刑吏は賤民であり,【名誉をもたない】立場であった.

ちなみに名誉をもたない事は権利をもたないこととよく見ているが,厳密には異なる. 中世ドイツの法典ザクセンシュピーゲル・ラント法の一注解によると,権利喪失には三段階があり, 一,裁判能力をもたないこと,二,財産処分能力をもたないこと,三,生命・財産に対する権利をもたないこと, すなわち法の保護を奪われていること*1である. 通常賤民はこの一に入れられている.

刑吏を含めた公職に関わる役人が賤民とみなされていたことは注目に値する. ここでは賤民の賤民たる所以についてはあまり触れない.

1.罪人を召捕る役人 2.廷吏の事.裁判所職員.
阿部謹也:刑吏の社会史 中公新書

刑吏の仕事

刑吏の仕事で代表的な者は処刑であるが,その他の刑罰の執行も行なっていた.